Vol.3 18今季の就活生の動向について
新年おめでとうございます。
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
お正月はいかがお過ごしだったでしょうか。
家族との時間を過ごしたり、久しぶりに会う親族、友人との語らいの時間を持ったりされた方も多いのではないかと思います。
今年就活を迎える学生さんたちも、それぞれの時間を過ごしたことでしょう。親戚一同でおせちを食べながら「いよいよ就職だね」「志望業界は決まっているの?」なんていう会話が交わされた家もたくさんあったはずです。
今回は、今季就活を迎える学生たちの動向について触れてみたいと思います。
まず、学生たちは2018卒の就活をどのようにとらえているのでしょうか。
株式会社ディスコ様の調査によると、2018年卒の就職戦線は「先輩たちより厳しくなる」が72.6%となり、前年調査に比べて6.3ポイントも増加していることがわかります(11月後半時点)。理由としてはイギリスのEU離脱問題やアメリカ大統領選の結果を受け、経済の不透明感を感じていることが挙げられています。危機感を感じた学生たちは、おそらくエントリー数を増やすことでリスクを減らそうとすることでしょう。エントリー数が増えたと仮定したとき、もし企業が採用を絞らないとしたら、学生たちはより魅力ある企業に多く確保され「人材の垂直方向の奪い合い」が発生すると思われます。もし企業が採用を絞るとしたら、志望上位の企業から内定がもらえなかった学生はより多くの企業と接点を持とうとするでしょうから「人材の水平方向の奪い合い」が発生すると思われます。つまり、「先輩たちより就活が厳しくなる」と予想する中においては、企業はより多くの企業と比較され、シビアに選ばれる側になると考えられます。
また、11月後半時点での志望業界トップは、全体では1位:銀行、2位:水産・食品、3位:医薬品・医療関連・化粧品となっています。以下、上位10位までの顔ぶれは前年とほぼ同じとなっており、やはりBtoCの業界に関心が集まっていることがわかります。合同企業説明会に行き、各ブースへの学生の集まり具合を見るとその傾向がはっきりと見えてきます。BtoCで親しみのある業界や名前が知れ渡っている企業にはたくさんの学生が順番待ちをしていますが、BtoBの会社は、たとえ優良企業でもあまり学生が入っていない、そんな光景も珍しくありません。
では、BtoBの会社や知名度が高くない会社はどうすることもできないのかというと、決してそうではありません。現時点では志望業界が「明確に決まっている」のはわずか19.1%。実に80%以上の学生は「決まっていない」か「なんとなく決まっている」程度なのです。また、第一志望の業界を選んだきっかけの1位は「業界研究の結果、興味を持った」。続く2位は「インターンシップに参加して興味を持った」となっています。つまり「業界や自社のことを知ってもらう」「インターンシップに参加してもらう」流れを作ることがポイントだといえそうです。
「業界や自社のことを知ってもらう」ためには、やはり広報活動が欠かせません。予算が潤沢にあれば、テレビやラジオでCMを流したり合同企業説明会に何度も出たりできますが、無論そうした企業ばかりではないと思います。そこで、例えば合同企業ガイダンスに出る回数は同じでも、1回当たりの効果を最大化することを考えてみてはどうでしょうか。「ブースの装飾を改善し、見た目で興味を持ってもらえるようにする」「パワーポイント資料を学生にわかりやすく作り直す」「学生向けの会社案内を作成する」など、合同企業説明会の効果を最大化する働きかけをすることで、より多くの学生と接点が持てたり、接点を持てた学生さんが選考を希望してくれたりする確率を上げるのです。ブースの装飾が貧弱では学生さんも立ち寄ってはくれませんし、会社案内も一般向けのものを流用しているよりは、学生向け・就活用に特化したものをもう1冊作った方がはるかに訴求力を高められるはずです。
このあたりは営業的な感覚と近い部分があるかと思います。営業経験がない人事ご担当者の方は、一度自社の営業担当者に相談してみるのもよいかもしれません。日頃から自社製品に関心を持ってもらう努力をしている営業担当者のことですから、思わぬ視点から学生の気持ちをつかむ提案をしてくれたり、ちょっとしたブラッシュアップで飛躍的に興味を引ける改善を教えてくれたりすることが期待できます。
そしてもう1つの「インターンシップに参加してもらう」動きです。インターンシップの参加経験者は年々増加傾向にあり、2018年卒者もすでに76.4%がインターンシップを体験しています。また、9.8%は応募したが選考に漏れており、インターンシップへ参加する動きを見せていない学生はわずか13.7%となっています。つまり、多くの学生がインターンシップを重要視しているのです。
さらに、学生が挙げる企業選びのこだわりを調査してみると、1位は「人・社風」で、ここに「強くこだわる」を挙げた学生はなんと58.1%にも上ります。「待遇」への強いこだわりを挙げた学生が31.9%、「企業規模」が10.8%であることを考えると、「やっぱり学生は大企業に行くのだろう」「ウチは給料が低いから学生が集まらない」という嘆きはあまり当てはまらないとさえ思えます。
また、「人・社風」はインターンシップで知るのが最も生々しい情報であり、会社に行かずとも手に入る「待遇」「企業規模」といった情報とは一線を画しています。つまり「インターンシップに参加してもらう」ことはもちろん重要なのですが、そこで「人・社風を知ってもらう」カリキュラムを受けてもらうことが求められているといえるのです。
先に述べた通り、約10%の学生がインターンシップ参加を希望していながら選考に漏れていますので、参加したいという学生はまだまだいるはずです。既にインターンシップを企画している企業も多く、学生もそれに申し込んでいる、というケースもあるでしょう。そこで、短期日程のインターンシップを今から計画してはどうでしょうか。短期日程であれば、すでにインターンシップに申し込んでいる学生も「もう1社見ておこうか」という気持ちになってくれることが期待できます。そしてそこでは、「人・社風」を知ってもらうカリキュラムを実施します。若手社員と食事をしたり、社長の思いを語ってもらったり、社内見学をしてもらったりすることで、「人・社風」に触れてもらうのです。こうすることで、自社の「人・社風」を気に入ってくれる学生がいれば選考に進んでくれるでしょうし、合わなければ選考に進まないため、入社後のミスマッチを防ぐ効果も見込めるでしょう。
ここで1つ、非常に重要なポイントがあります。それは、「人・社風」を偽らない、ということです。ウソをついて入社させたところで、会社に対する不信感につながるだけで、早期離職につながるだけでなく、ともすれば就活掲示板に批判的な書き込みをされることにもなりかねません。「仕事が大変」「職人気質の難しい先輩も少なくない」など離職の原因につながりやすい点は、正直に学生に伝えた方が結果的に定着率の向上につながると感じます。それどころか「ネガティブなことも隠さず伝えてくれ、信頼感が増しました」という声が挙がることも珍しくありません。「仕事は大変だけれど、やりがいも大きいよ」「職人気質の難しい先輩もいるけれど、根はやさしくていい人ばかりだから」といった感じで、ポジティブにまとめてあげると必要以上に重く受け止められるリスクを減らすことができます。このあたりは「面接で短所を訊かれたらどう答えるか」というテクニックと似ていますね。
「正直に伝えたら入社してくれる学生などいなくなってしまう」という企業がもしもあったら……そうした企業は、早急に改善目標を立てればよいと思います。「今はこうだけれど、3年後にはこのように改善させるよう、今、会社は取り組んでいます」と伝えれば、学生たちはきっと「なんと真摯な会社だろう」と思ってくれるはずです。学生たちにとっては企業の窓口である人事担当者。その人たちが真摯な背中を見せられるかどうかで、心が動く学生さんたちも、きっといるはずなのです。