vol.1 17採用中間総括
2017年卒の新卒採用活動は、企業側の採用予定人数が充足したかどうかに関わらず、終盤戦を迎えています。株式会社ディスコ(東京都)の調査によれば、8月1日時点で76%の学生が就職活動を終えており、残る24%のうち約10%は就職活動を継続しているものの、既に内定を持っているという状況で、17採用を継続中の企業様には厳しい環境となっているのが現状です。
そこで、2017年卒の新卒採用活動について、株式会社ディスコの調査データをもとに中間総括をしてみたいと思います。今回は多くの企業が課題として認識しているであろう「母集団形成」に焦点を当ててみます。
母集団形成を考える上で、今年度の特徴的な変化は「エントリー社数の減少」ではないでしょうか。2015年卒者では85.5社/人あったエントリー社数が、2016年卒者では62社、2017年卒者では45.8社と、ここ2年で50%強にまで落ち込んでいます。この数字だけ見ると、母集団形成に対して危機感を抱く採用担当者もいらっしゃるかもしれません。
ただ、エントリー後のコンタクト数を見ていくとそれほど大きな減少にはなっていないことがわかります。企業セミナー参加社数(22.7社→17.8社 78.4%)、筆記試験受験社数(13.7社→12.6社 92.0%)、面接試験受験社数(9.7社→9.3社 95.9%)(※いずれも2015年卒者と2017年卒者を比較)と、エントリー社数の落ち込みに対して選考への参加数はほとんど変化がありません。恐らく、2015年卒者はそれ以前の先輩たちが就職活動で苦戦していたのを見ており、不安からエントリー社数を増やしていたためではないかと思われます。
ところが、売り手市場の時代に突入し、エントリー社数を増やす必要がなくなってくるにつれ、「とりあえずエントリーだけでもしておこう」といったケースが減ったのではないでしょうか。一方で、足を運んでセミナーに参加したり試験を受けたりといった物理的な接触には量的限界があります。このため、売り手市場かどうか別として、学生たちは動ける限り企業とコンタクトをとった結果、物理的な接触数については例年と大きく変わらない結果に終わったものと思われます。このことから考えると、エントリー数の減少はそもそも志望度の低い「とりあえずエントリー」が減ったのみで、実質的にはそれほど大きな問題ではない、とも読み取れそうです。
ところが、これを学生軸ではなく企業軸で読み解くと、また別の側面が見えてきます。
前年度と比較して、エントリー数が減った企業は46.4%となっていますが、そうした中、エントリー数を増やしている企業もまた33.2%あるのです。学生1人当たりのエントリー社数が減っている中、エントリー数を増やしている企業が3割以上あるということは、エントリー数が減った企業は「大幅に」減っている可能性があるということになります。つまり、学生のエントリーを確保できた企業とそうでない企業の格差が広がっている、ということがいえるのではないでしょうか。
それでは母集団形成を成功に導くために、各企業はどのような対策をしているのでしょうか。実施した施策の上位3つは、「学内セミナーへの参加を増やす」(62.2%)、「自社セミナーの開催数を増やす」(56.7%)、「Web上の露出を増やす」(43.0%)となっています。ただし、これらの施策は「増やせば必ず効果があがる」というものではなく、そもそも自社を見つけてもらう工夫をしなければ、学生の選択肢に入らない、という性質を持っています。(学内セミナーとて、数多く並んだ企業の中から選ばれ、ブースに着席してもらわなくてはなりません)『自社を選んでもらうためにどれだけ工夫できるか』が母集団形成の成否を大きく分けているのではないでしょうか。
言うまでもなく、今は採用難の時期です。採用難である以上、工夫をしなければ学生が集まらないのは当然といえるでしょう。もちろんお金を掛けてTVCMを作るなどしてメディアに露出させられればよいのでしょうが、そんな余裕のある企業は少数派ではないかと思います。そこで知恵を絞り、手を掛けて学生にエントリーしてもらう必要が出てきます。
県内の就活生はどのくらいの人数なのか、ご存知でしょうか。県内の大学生数は全体で約32,000人、就活生に限れば他県出身者も含め約8,000人いうことになります。このうち、たった0.1%がエントリーしてくれれば、母集団は8名増えるのです。多くの学生が就活サイトや学内セミナー、合同会社説明会等で情報を収集している以上、そうした場での告知が8,000人の就活生に対するアピールとほぼ同義であると考えれば、そこでの「0.1%の増減に対する意識の高低」が、母集団形成の成否に大きく影響する要因の1つであることは間違いないと思われます。就活サイトにおけるほんのわずかな情報量の差、学生に対して真摯に向き合う姿勢の違い、どこまでわかりやすく自社のことを説明しているか、そして人事担当者の採用にかける情熱や学生に対する愛情の強さ…こうしたことの積み重ねが、0.1%の差につながり、ある企業ではエントリーが増え、一方である企業ではエントリーが減るということにつながるのです。
残念なことに、合同会社説明会のブースを回ると、近寄らなければ見えないほど小さな掲示資料を見かけたり、企業説明があまりにもたどたどしくわかりづらかったり、果ては足を組んでスマートフォンをいじっている人事担当者まで見受けられます。学生の声にも「誠意が感じられない企業があった」「人事担当者に見下されたような印象を持った」といったものがあります。大多数の人事担当者が真摯に対応している中、一方でそうした声があることもまた事実です。採用活動が対「人」である以上、相手の受け取り方がすべてであり、そこで好印象を持ってもらえなければ、学生の中に次のステップへの種を蒔くことはできないのではないでしょうか。
そこで、2017年卒の新卒採用活動について、株式会社ディスコの調査データをもとに中間総括をしてみたいと思います。今回は多くの企業が課題として認識しているであろう「母集団形成」に焦点を当ててみます。
母集団形成を考える上で、今年度の特徴的な変化は「エントリー社数の減少」ではないでしょうか。2015年卒者では85.5社/人あったエントリー社数が、2016年卒者では62社、2017年卒者では45.8社と、ここ2年で50%強にまで落ち込んでいます。この数字だけ見ると、母集団形成に対して危機感を抱く採用担当者もいらっしゃるかもしれません。
ただ、エントリー後のコンタクト数を見ていくとそれほど大きな減少にはなっていないことがわかります。企業セミナー参加社数(22.7社→17.8社 78.4%)、筆記試験受験社数(13.7社→12.6社 92.0%)、面接試験受験社数(9.7社→9.3社 95.9%)(※いずれも2015年卒者と2017年卒者を比較)と、エントリー社数の落ち込みに対して選考への参加数はほとんど変化がありません。恐らく、2015年卒者はそれ以前の先輩たちが就職活動で苦戦していたのを見ており、不安からエントリー社数を増やしていたためではないかと思われます。
ところが、売り手市場の時代に突入し、エントリー社数を増やす必要がなくなってくるにつれ、「とりあえずエントリーだけでもしておこう」といったケースが減ったのではないでしょうか。一方で、足を運んでセミナーに参加したり試験を受けたりといった物理的な接触には量的限界があります。このため、売り手市場かどうか別として、学生たちは動ける限り企業とコンタクトをとった結果、物理的な接触数については例年と大きく変わらない結果に終わったものと思われます。このことから考えると、エントリー数の減少はそもそも志望度の低い「とりあえずエントリー」が減ったのみで、実質的にはそれほど大きな問題ではない、とも読み取れそうです。
ところが、これを学生軸ではなく企業軸で読み解くと、また別の側面が見えてきます。
前年度と比較して、エントリー数が減った企業は46.4%となっていますが、そうした中、エントリー数を増やしている企業もまた33.2%あるのです。学生1人当たりのエントリー社数が減っている中、エントリー数を増やしている企業が3割以上あるということは、エントリー数が減った企業は「大幅に」減っている可能性があるということになります。つまり、学生のエントリーを確保できた企業とそうでない企業の格差が広がっている、ということがいえるのではないでしょうか。
それでは母集団形成を成功に導くために、各企業はどのような対策をしているのでしょうか。実施した施策の上位3つは、「学内セミナーへの参加を増やす」(62.2%)、「自社セミナーの開催数を増やす」(56.7%)、「Web上の露出を増やす」(43.0%)となっています。ただし、これらの施策は「増やせば必ず効果があがる」というものではなく、そもそも自社を見つけてもらう工夫をしなければ、学生の選択肢に入らない、という性質を持っています。(学内セミナーとて、数多く並んだ企業の中から選ばれ、ブースに着席してもらわなくてはなりません)『自社を選んでもらうためにどれだけ工夫できるか』が母集団形成の成否を大きく分けているのではないでしょうか。
言うまでもなく、今は採用難の時期です。採用難である以上、工夫をしなければ学生が集まらないのは当然といえるでしょう。もちろんお金を掛けてTVCMを作るなどしてメディアに露出させられればよいのでしょうが、そんな余裕のある企業は少数派ではないかと思います。そこで知恵を絞り、手を掛けて学生にエントリーしてもらう必要が出てきます。
県内の就活生はどのくらいの人数なのか、ご存知でしょうか。県内の大学生数は全体で約32,000人、就活生に限れば他県出身者も含め約8,000人いうことになります。このうち、たった0.1%がエントリーしてくれれば、母集団は8名増えるのです。多くの学生が就活サイトや学内セミナー、合同会社説明会等で情報を収集している以上、そうした場での告知が8,000人の就活生に対するアピールとほぼ同義であると考えれば、そこでの「0.1%の増減に対する意識の高低」が、母集団形成の成否に大きく影響する要因の1つであることは間違いないと思われます。就活サイトにおけるほんのわずかな情報量の差、学生に対して真摯に向き合う姿勢の違い、どこまでわかりやすく自社のことを説明しているか、そして人事担当者の採用にかける情熱や学生に対する愛情の強さ…こうしたことの積み重ねが、0.1%の差につながり、ある企業ではエントリーが増え、一方である企業ではエントリーが減るということにつながるのです。
残念なことに、合同会社説明会のブースを回ると、近寄らなければ見えないほど小さな掲示資料を見かけたり、企業説明があまりにもたどたどしくわかりづらかったり、果ては足を組んでスマートフォンをいじっている人事担当者まで見受けられます。学生の声にも「誠意が感じられない企業があった」「人事担当者に見下されたような印象を持った」といったものがあります。大多数の人事担当者が真摯に対応している中、一方でそうした声があることもまた事実です。採用活動が対「人」である以上、相手の受け取り方がすべてであり、そこで好印象を持ってもらえなければ、学生の中に次のステップへの種を蒔くことはできないのではないでしょうか。