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38.採用力について考える(3)

今回は、「戦略的採用」について考えます。
最近、採用難の情勢を受けて、人事系コンサルタントを中心に盛んに採用支援業務の提案活動や「戦略的採用を教えます」といったセミナーが開催されています。
その内容も、採用母集団の形成方法、面接の指導や代行、新卒採用では内定者フォローから親へのフォローまで多岐にわたっています。

しかし、今回ここで取り上げる「戦略的採用」とは、貴社の経営計画とリンクした採用活動という意味での「戦略的」採用です。
実際の採用活動において、資金的な余裕があって旧来の方法を大幅に見直す必要があるのであれば、コンサル導入もセミナー受講もいいでしょう。
ですが、このコラムでは採用活動は目新しいもの、流行、目を引く手法などに左右されて方針を変えるものではなく、貴社ならではのオーソドックスで地道な、一貫性のある活動を継続することが大事だという立場から書いています。

さて、経営計画とリンクした採用計画とは?採用計画を立てる際に経営計画を意識しているでしょうか? 実際のところは、「今般の売り手市場では最低でも1人、うまくいったら3人取れれば上出来だ。採用できた人を見てどこかに配属しよう」という程度ではないでしょうか。
「当社では、もっとしっかり計画的にやっている」とのお叱りを受けるかもしれませんが、そうであればお許しください。そのうえでもう少しお読みください。

人材ポートフォリオというマトリクス図をご覧になったことがあると思います。
 
コラム写真01
上図は2×2マトリクスにまとめた一般的なものですが、どういった人材を採用したいか?(あるいは新卒採用であれば入社後にどう育てていきたいか?)を考えるうえでの指針になります。(上図はあくまでも参考です。貴社のスタイルにあわせて人材のパターンを考えてください)

その上で、
(1)貴社の経営方針・戦略
(2)現時点での人員構成とスキルセット
(3)5年後10年後の人員構成予測と、不足すると予想されるスキルセット
(4)さらに今後、退職によってスキルを失わないための方策

以上の4項目を経営トップと人事担当で考えてみてください。(4)以外は、かなりの確率で正確に姿を描けるはずです。

ドラッカーは、事業のマネジメントを考えるにあたり次の質問をクライアントに投げかけていました。
(1)「われわれの事業は何であるべきか」
(2)「どうなりたいか」
(3)「(現在は)どうであるか」です。


(1)は事業の目的(=ミッション)です。その事業が社会に受け入れられて継続してその存続を可能にするものでなければなりません。
(2)は、(1)を実現するための計画です。(1)と(2)が大きく乖離することはないでしょう。
しかし(1)が不変であるのに対して(2)は社会の変化(環境や技術)によって修正が必要です。
(3)は現状分析を行うことです。そして(2)とのギャップを明らかにして詳細な計画を立てていきます。

人材のマネジメントも同じ構造です。事業を進めるうえでどのような人材をどこに、どれだけ配置するべきか。現状とのギャップをみてどのように実現すべき姿に近づけていくかです。

経営資源として、ヒト・モノ・カネといわれます。
モノ(機械、材料、店舗など)やカネ(資金調達)などはひと昔前とは違い、差別化ができなくなりました。つまり比較的容易に調達可能かつ模倣も可能になりました。その中でヒトに関してはますます重要性が増し、単に競争力の源泉以上に採用・育成の失敗が事業の存続を左右することにつながるようになってきました。少々、話がそれてしまいました。もとに戻します。

そうなると、現時点でどういったスキルを持った人(新卒であれば育つ素地がありそうな人)を採用すべきかが決まります。採用人数(必要人数)も決まります。できることならこの採用方針(戦略)も経営計画(戦略)などと同様に全社員に公表して共通認識とすべきでしょう。

ここから、人事部門・採用チームの長く厳しい戦いが始まる訳です。1年2年でこの採用計画を達成することは難しいかもしれません。求めるスキルを持った人を採用できない、人数も充足しない状況が続くかもしれません。
しかしながらこの計画を全社共通の認識で継続することで、小さな成功例をきっかけに好循環を生み出していきます。 目標をきちんと決め、結果をうけてフィードバックを繰り返す。うまくいったことは見える化し、手法として蓄積できます。うまくいかなかったことから次の打ち手を考えます。毎年、試行錯誤の繰り返し状態から少しずつ活動の精度を上げていくのです。
 
コラム写真01
人事部門・採用チームにとって、この先も採用難の厳しい時代が続くでしょう。しかし採用方針を全社で共有し、社内に対して採用活動(目標・人事部門の奮闘ぶり・結果・フィードバック)をオープンにしていくことで理解を得られるでしょう。もしかすると社員の皆さんが持っているアンテナに引っかかった人材情報の提供を受けられる可能性もあります。

繰り返しになりますが、「一人でも当社に来てくれれば御の字」という本音は心の中にしまい込んでおいてください。最初はダメもとでも結構です。しっかり採用計画すなわち採用したい人物像・スキルと採用したい人数を明確にして取り組んでください。

今回のコラムでは、新卒採用と中途採用(キャリア採用)を分けずに話を進めました。
次回は、どういった人材をどの市場⋆から調達するのか、について書いていきます。

※人材に対して市場といった表現は避けるべきかもしれませんが、新卒市場、第二新卒市場、採用マーケットなどの表現を新聞等でも見ますのでそれに倣い使わせていただきました。また、人材についても人財という表記も最近目立ちますがこのコラムでは、採用時には将来の能力が未知数であるヒトを「人材」という表記とし、自己啓発や組織内での育成の結果として戦力化したヒトを「人財」と表記して区別します。

Topics : STEM教育/STEM人材

日本においても、学生の理系離れが進んでいると言われます。米国においても同じような状況のようです。今回取り上げた、STEMとは「Science」(科学)、「Technology」(技術)、「Engineering 」(工学)、「Mathematics」(数学)の頭文字を取った造語で、これらを統合的に学ぶ機会を子どもたちに提供することで、次世代を担う人材に育てようという教育方針です。
STEM教育の発祥の地であるアメリカでは、理工系の知識に長けたSTEM人材を育成することは、重要な国家戦略のひとつに位置付けられています。 
すでにアメリカでは、STEM教育予算に年間約30億ドルを投入し、2020 年までに初等中等教育の優れたSTEM分野の教師を10万人養成。2012年からの10年間でSTEM分野の大学卒業生を100万人増加させるなど、具体的な数値目標を掲げて取り組んでいます。このことからも本気度が伝わってきます。

もちろん、STEM教育に熱心なのは、アメリカだけではありません。ヨーロッパの先進国やインドやシンガポールなど「技術立国」を目指すアジアの新興諸国では、幼少期から基礎的な電子工学やプログラミング技術に親しむ機会を作り、国を挙げてSTEM人材の育成に向けた取り組みを着々と進めています。
日本においては、大学の学部編成の見直しや小学生からのプログラミング教育導入など個別の動きはみられるものの、国家プロジェクトとして、課題に取り組んでいこうとするような兆しは見えません。
企業の採用(特に新卒採用)においては、職種ごとに理系/文系を分けるといった方針を見直すところが出てきています。今まで文系学生しか対象にしなかった職種(経理や営業)などでも優秀な理系学生を採用したいという企業が増えています。

まさにデジタルネイティブ世代の若者とアナログながらも経験知を蓄積してきたベテラン社員をうまく組み合わせ機能させることができれば、社内で新たな価値を創造できるでしょう。
今後、AIを使う技術を持った理系学生と、AIを使って何をやらせるかを体験として知っているベテラン社員の共働を活かせるかが、企業の競争力の差になってくるでしょう。

次回「第39回 採用力について考える(4)どこから採用するか」は5月31日掲載の予定です。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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