第15回 職場における小改善で効率アップ(1)
いきなり、職場の常識に反するようなタイトルです。No残業でさっさと帰ってしまっては、やり残しの仕事が累積してしまうでしょう。そしてある日、破綻が……
ひと昔前(もっと昔かもしれません)の職場の朝の風景を再現してみましょう。始業5分前からスピーカーからラジオ体操が聞こえ、遅刻ギリギリの社員が駆け込んできます。始業時にはチャイムが鳴って、全員起立で「社是」「社訓」を唱和。引き続き簡単な朝礼。その後、各自着席。社歴が一番短い社員がお茶を入れにいって、部長以下先輩社員のデスクに配ります。部長は、会社で購読している新聞を広げて隅から隅までじっくり時間をかけて読んでいます。それを横目で見ながら社員たちも「さあ、今日は何から、どこから仕事にかかろうか?」と考えをめぐらす。お茶を配り終えた後の給湯室では、各部署の若手社員がひそひそ声のうわさ話でひと盛り上がり。あっという間に小一時間が過ぎ、外部から電話が入ってくるようになって、やっとエンジンがかかる。
ちょっと大げさでしょうか?でも、ひと昔前はそうでした。
さすがに「お茶汲み」や足をデスクに乗せての「新聞読み」はなくなりましたが、「決して朝一番からスタートダッシュしてはいないな」というのが現実ではないでしょうか?
【スターターになる仕事を用意しておく】
本題に入りましょう。
結論は、翌朝一番でする(比較的簡単な作業レベルの)仕事を残して帰りましょう。ということです。
運動するときにウォーミングアップしてからパフォーマンスをあげていくように、始業と同時に用意しておいた仕事を片付けることで仕事モードを作りあげていくのです。朝一番の最も身体も頭もさえている状態のゴールデンタイムを無為に過ごさない、このためのイグニッション(点火装置)となる仕事を前日に用意しておくのです。
こうして、スタートダッシュよろしく仕事を始めると、社外、社内からの電話や打ち合わせなどの計画外の用件があっても、一日のスケジュール調整もスムーズにいきます。逆に、新聞や雑談で小一時間を無駄にしてしまうと、計画外のイベントに振り回されて、自身の予定も立たぬままお昼になってしまう、なんてことになりかねません。
「時間術」「時間活用法」などの書籍でも、「朝の1時間は、夜の2or3時間に相当する」とされています。この1時間が一日のパフォーマンスを決めるといってもよいでしょう。
【終礼をやってみる】
提案する終礼とは終業時にするのではなく、終業1時間前くらいを想定しています。
その部署の人数にもよるでしょうが、10分程度でその日の情報共有、指示伝達を行ってください。終礼後、各メンバーは共有した情報、指示伝達されたこと、その日の仕事のまとめ、翌朝のスタートアップ用の仕事の決定をする訳です。ここも終業時間という締め切り時間を意識して集中して行います。また、指示伝達されたことについての質問や相談も、その日のうちにしておくと翌日からの計画が立てやすくなります。
【ワーキングアワーの中心時間】
昼休みを挟んだ前後の2~3時間(全体では6時間)程度が実務上のコア時間になります。朝一での一仕事を終えた達成感と今日の計画が頭に入ってのスタートです。社外や社内からの依頼事項が飛び込んできます。緊急を要すものもあるでしょう。これらは避けられないものです。しかし、あらかじめ組んであった予定の優先順位の組み換えで対応していくことができます。
要するに、仕事に振り回される状態ではなく、コントロールできているという感覚です。仕事全体のボリュームの管理もできるようになります。応援が必要であれば、早めに手配ができます。自分自身だけでなく、チーム全体の工数(作業手順の段階数のこと)の無駄も減らせるはずです。
「働き方改革」というスローガンのもと、まずは残業時間を減らすことが全てと言わんばかりの状況になっていませんか?
労働基準監督署も時間外労働時間と割増賃金の支払状況については徹底的に調査しています。たとえ労働者が、「仕事ではなく自発的に会社に残って同僚と雑談していた」と言ったとしても、会社に残っているという事実、雑談が全く仕事に関係ないかを証明できないこと、雑談後PCのシャットダウンをして机の上の片づけをした(これは業務ですよね)ことによって時間外勤務と認定してきます。何十年も前の、工場のラインの労働からの発想で作られた法律が、時代の働き方にあっていないのは事実です。それでもその法律がある以上は企業も対応(自己防衛)しなければなりません。
朝時間の有効活用、終礼と翌日の準備の活用で効率アップを図る、そして定時にはPCのシャットダウンまでして帰ることができる体制を作っていきましょう。そのうえで、繁忙期や緊急時には、法律内の(36協定内の)時間外労働で対応していきましょう。
Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。