【人事よ、臆せずススメ!】第6回 強みについて(3)
「上司の強み生かす」
前回(第5回)では、「自分の強みを知り、生かす」について解説しました。今回は、「上司の強み」についてです。少々長いですが、ドラッカーからの引用です。
成果をあげるためには、上司の強みを生かさなければならない。(中略)しかも上司の強みを生かすことは、部下自身が成果をあげる鍵である。上司に認められ、活用されることによって、初めて自らの貢献に焦点を合わせることが可能となる。自らが信じることの実現が可能となる。もちろん、へつらいによって上司の強みを生かすことはできない。なすべきことから考え、それを上司にわかる形で提案しなければならない。
上司も人である。人であれば強みとともに弱みももつ。上司の強みを強調し、上司が得意なことを行えるようにすることによってのみ、部下たる者も成果をあげられるようになる。
『経営者の条件』pp.127-128
Boss Management という言葉を聞いたことがありますか?
日本ではあまりポピューラーではないようですが、欧米ではよく知られた考え方です。
あなたの上司(Boss)が昇格する、あるいは転職してそのポジションが空かない限り、あなたはその地位に上がることができない。ポジションが空いたとしても、上司の推薦がなければ、組織は外から人材を確保してしまう。よって、あなたは上司の成功のため、上司がその強みを生かして仕事ができるよう配慮するとともに、弱みを補完すべくサポートするべきである、という考え方です。
日本でこの考え方があまり広まらなかったのは、
・上司があなたに繰られているような印象を持ってしまう危険性
・あなたの部下からはあなたの行動が上司に対するへつらいに見えるという危険性
この2点があったからだと思います。
しかしながら、実際に有能な社員というものは、自分の属するチームの仕事の成果をあげるために自分だけでなく上司、部下、同僚の強み(弱み)を知り、上記の危険性を意味のないものにしてチームワークを作っていくものです。いかがでしょうか?
上司もまた人であって、それぞれの成果のあげ方があることを知らなければならない。上司に特有の仕事の仕方を知る必要がある。単なる癖や習慣かもしれない。しかしそれらは実在する現実である。
『経営者の条件』pp.129
この引用に続き、「読む人」「聞く人」という2タイプの仕事の仕方の例示が続きます。
・読むことによって理解が進むタイプの上司に口頭で報告しても時間の無駄である。読んだ後でなければ聞くことができない。
・聞く人に分厚い報告書を渡しても時間の無駄である。耳で聞かなければ何のことか理解できない。
意思決定に対しては、
・準備のために初めから関与したがる人がいる
・時期がくるまでは、何も聞きたくないという人がいる。
上司の強みを生かすには、問題の提示にしても、「何を」でなく、「いかに」について留意しなければならない。何が重要であり何が正しいかだけでなく、いかなる順序で提示するかが大切である。(中略)誰もが人については専門家になれる。本人よりもよくわかる。したがって、上司に成果をあげさせることはかなり簡単である。
強みに焦点を合わせればよい。弱みが関係なくなるように、強みに焦点を合わせればよい。上司の強みを中心に置くことほど、部下自身が成果をあげやすくなることはない。
『経営者の条件』pp.130
まずは、上司を観察することから始めてみてはいかがでしょうか?
次回以降「強みを生かした人事」について書いていきます。
次回「第7回 強みについて(4)」は7月5日掲載の予定です。
Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。