第4回 強みについて(1)
「強み」とは何か?
もし、このブログを読んでくださっているあなたが管理部門(人事部門)の所属であったならば、決済権限の範囲、執行できる予算額の多寡にかかわらず、あなたは組織全体を客観的に見ることができるポジションにいるはずです。人事においては、個別の部門の要求を聞きつつも、常に全体最適を考えての判断、意思決定、助言することが求められます。
組織が成果をあげていくうえで必要な「強み」について考えていきます。
まず、今回は「強み」とは何かについて、ドラッカーの書作よりいくつかの考え方を提示します。簡単に理解でき、腑に落ちるとはいきませんが、問題意識を持ちながら読んでください。
次回以降、「自分の強みを知り、生かす」「上司の強みを生かす」「強みを生かした人事」について4回に分けて解説します。
「強みとは?」
誰でも自分の強みはわかっていると思う。たいていが間違いである。知っているのは、強みというよりも強みならざるものである。それでさえ間違いのことが多い。
何事かを成し遂げられるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない。(中略)
強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である。何かをすることに決めたならば、何を期待するかを直ちに書きとめておかなければならない。そして九か月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合しなければならない。
P.F.ドラッカー 『明日を支配するもの』pp.194
なぜ、強みを正しく知ることが難しいのか?
(このことを意識すれば強みを知る手掛かりが見つかります)
・強みの本質を知らないから・・・強みとはその人の持っている資質に起因
資質から強みを見つける方法は次回説明します。
・日頃から長所、強みについて意識しないで来ているから・・・観察と記録
自分の仕事ぶりを振り返ってみる。周りの人が悪戦苦闘している仕事なのに、自分は結構平気でできるものはないか?
周りの人に自分の強みと思われることを聞いてみる。
小さなうまくいったことを記録しておいて読み返す。
・仕事と成果の関係で強みをとらえていない・・・記録と観察
いくら努力しても並みの出来栄えにしかならない仕事においては、あなたの強みは発揮されたとは言えません。成果のあがった仕事を振り返ってどのような仕事の仕方をしたか?を振り返り記録しましょう。
そのうえで、ドラッカーの指摘にあるように、ある仕事を始めるにあたって、
①その仕事の目的は何か、なんのためにやるのか
②目標(ゴール)は何か、どうなったら成功と言えるのか
を書きとめることです。
ふだんでも仕事が終わった時には何らかの評価(うまくいった、いかなかった)はやっているでしょう。しかし、ぜひ「①②で書きとめた期待」と「結果」の照合をして評価をしてください。
この手法を実行に移すならば、二、三年の短期間に、自らの強みが何であるかが明らかになる。自分自身について知りうることのうち、この強みこそ最も重要である。しかも自分が行っていることや、行っていないことのうち、自らの強みを発揮する上で邪魔になっていることまで明らかになる。もちろん得意でないことも明らかになる。まったく強みのないこと、できないことも明らかになる。
『明日を支配するもの』 pp.195-196
「弱みとは?」
大きな強みをもつ者はほとんど常に大きな弱みを持つ。山あるところに谷がある。しかもあらゆる分野で強みをもつ人はいない。
『経営者の条件』 pp.103
強みを伸ばすということは、弱みを無視してよいということではない。弱みには常に関心を払わなければならない。しかし人が弱みを克服するのは、強みを伸ばすことによってである。
『非営利組織の経営』 pp.238
弱みにばかり気を取られていては成果をあげることはできません。また一方で、強みも過ぎれば(使い方を間違えば)害をなします。
弱みを克服しようと努力するより、強みをより成果に結びつけるように生かすことに時間を使いなさい、とドラッカーはアドバイスしています。
自らの仕事においても、まず強みからスタートしなければならない。すなわち自分のできることの生産性をあげなければならない。
『経営者の条件』 pp.130
組織で働く者にとって、自らが成長する機会は仕事の中にしかありません。一生懸命やりましたが結果は出ませんでした、ではダメなのです。
いま、目の前にある仕事に集中し、自分に何ができるか、自分の強みを生かして成果が上げられるかが問われています。
次回は、「自分の強みを知り、生かす」について具体的に考えていきます。
次回「第5回 強みについて(2)」は6月27日掲載の予定です。
Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。