第1回 早期退職を防ぐ(1)
新入社員の皆さんは元気に出社していますか?
今年度は何人の社員が入社しましたか?人事部の管轄する研修も終了して各部門に配属されていると思います。入社時の元気な挨拶、できていますか?
5月病という言葉があります。入社して1~2か月は、緊張からの疲れがたまり、連休モードから仕事モードに切り替えるのが難しいのでしょう。
貴社では、
・新入社員教育(研修)は自前ですか?外部講師ですか?
・フォローアップの研修は実施していますか?
・メンターはいますか?(新入社員一人ずつに教育係を付けていますか?)
そして、早期に辞めてしまう新入社員はいませんか?
3年・5年以内の退職率は?同業種と比べて多い、少ない? いかがでしょうか。
ドラッカーは、「最初の仕事はくじ引きである。最初から適した仕事につく確率は高くない。しかも得るべきところを知り、自分に向いた仕事に移れるようになるには数年を要する。」と言っています。(『非営利組織の経営』p212)
私が以前に勤めていたIT(ソフトウェア開発)の会社では、新入社員・若手社員の離職率が非常に低かったのです。みんなでその理由を考えましたが、これといって他社と違う何か特別なことをしているわけではありませんでした。問題点であれば、追及していくと何かしらの原因が出てきますが、なぜかうまくいっていることの原因というものは見つかりにくいものです。
それでも、小さなことはいくつかあったような気がします。もし、貴社で取り組んでいないようであれば、下記の4点を試してみる価値はあるでしょう。お金のかかることではありません。ちょっとだけ、時間を割くだけでできることです。効果の測定には時間がかかりますが、新入社員の様子から感覚的にとらえられるかもしれません。
◎新入社員教育(研修)の内容を、社内で共有していますか?
⇒少なくとも、配属部署には伝えてください。新入社員が研修で学んだことを実行しているか否かのチェックにもなります。
◎フォローアップ教育(研修)は、やっていますか?
⇒入社直後の教育(研修)で伝えたことの再確認、定着確認を行うものです。6か月後くらい、同期入社全員を集めて人事が主催して行います。配属先での業務の都合もあるでしょうから休日に行って、どこかで代休を与えるのがよいでしょう。
◎配属先での指導係(メンター)はいますか?メンターに対する指導は?
⇒日常業務を抱えている中で指導係に指名された社員の負荷は大変だと思います。メンターに対する上長のフォロー、人事の協力も社内の(公的な)重要業務として位置づける必要があるでしょう。
◎育て名人、潰し屋
⇒不思議と、社員が育つ部門と、(ちょっと過激な言葉ですが)潰し屋がいてすぐやめさせてしまうといった部門があるものです。年に一度くらいは、メンターとその部門長を集めて、良い知恵やうまくいかない原因を出し合って言語化することを試みましょう。そうした積み重ねを会社全体の人材育成の知恵として共有しましょう。
繰り返しになりますが、お金はかかりません。少し時間をやりくりすればできること。
効果が出るには時間がかかりますが、うまくいったら効果絶大です。
次回「第2回 早期退職を防ぐ(2)」は6月13日掲載の予定です。
Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。