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42.集中、計画的廃棄、劣後順位、優先順位、勇気

働き方改革の制度上の問題とは別に、私たちは常に仕事を生産的なものとしていかなければなりません。すなわち生産性の向上を目指すことです。
このことにより、よりクリエイティブな活動へと向ける時間を確保したり、仕事と生活のバランスを改善したりもできます。個々の生産性向上の積み重ねから、他社に対する競争優位をもたらすことも可能です。
 

1.はじめに「集中」(concentration)について考えていきます。

成果を上げるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。成果をあげる人は、もっとも重要なことから始め、しかも、一度に一つのことしかしない。
集中が必要なのは、仕事の本質と人間の本質による。いくつかの理由はすでに明らかである。貢献を行う時間よりも、行わなければならない貢献のほうが多いからである。行うべき貢献を分析すれば、当惑するほど多くの仕事が出てくる。時間の分析をすれば、真の貢献をもたらす仕事に割ける時間はあまりにも少ないことがわかる。
いかに時間を管理しようとも、時間の半分以上は依然として自分の時間ではない。時間の収支は、常にマイナスである。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』p138『プロフェッショナルの条件』p137

ここで、注意したいのが「集中」の意味合いです。目の前の仕事に没頭するといった、いわゆる「集中力」は当然のこととしています。
ただし、その集中力を阻害する要因の除去は考えなければなりません。ここで議論している「集中」は、「選択と集中」という言葉でいうところの「集中」です。
「何をやるべきか」「何を最初にやるか」を決めるということは、「何を捨てるか(他者に任せる、まったく辞めてしまう)」「何を後回しにするか」を決断することです。
そして、常にやるべきことに割ける時間は十分とはいえないという現実があるのです。

集中は、あまりにも多くの仕事に囲まれているからこそ必要となる。なぜなら、一度に一つのことを行うことによってのみ、早く仕事ができるからである。時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数や種類は多くなる。それこそ困難な仕事をいくつも行う人たちの秘訣である。
彼らは一時に一つの仕事をする。その結果、ほかの人たちよりも少ない時間しか必要としない。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』p139『プロフェッショナルの条件』p138
 

2.計画的廃棄:古くなったものを整理する

集中するための第一の原則は、もはや生産的でなくなったものを捨てることである。そのためには、自分と部下の仕事を計画的に見直し、「まだ行っていなかったとして、今これに手をつけるか」を問わなければならない。
答えが無条件にイエスでなければ、やめるか、大幅に縮小すべきである。もはや生産的でなくなったもののために、資源を投じてはならない。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』p142 『プロフェッショナルの条件』p139

今までやってきた仕事を、個人の判断でやめる・縮小することは、組織の運営上たいへん危険です。
ですからドラッカーは、「自分と部下の仕事を計画的に見直し…」と言っています。つまり、自分の仕事の後工程の人に聞くことです。「自分の仕事をあなたはどのように利用していますか?」と。実際には、会議の提出資料の各項目について聞いてみるといいでしょう。

すると、まったく使っていない(ムダな作業)、使い勝手がよくないので自分たちで作っている(重複作業)、元データをくれればあとは自分たちで加工できる、もう一歩踏み込んだ分析にしてくれればそのまま使えるなどいろいろな意見が出るでしょう。
これを全社的にやってみるとムダ、重複、もしかするとモレ防止もでき、おおきな効果が期待できます。仕事の生産性ばかりでなくコミュニケーションの向上も図れます。

古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である。私の知る限り、アイデアが不足している組織はない。創造力が問題ではない。そうでなく、せっかくのアイデアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが問題である。みなが、昨日の仕事に忙しすぎる。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p146 『プロフェッショナルの条件』p141

コラム写真01

3.劣後順位(posteriorities)、優先順位(priorities)、勇気(courage)

劣後順位はあまり聞きなれない言葉ですが、何をやらないかを決断するということです。何かを捨てて、時間と担当する有能な人とを確保してはじめて明日のための生産的な仕事ができるのです。明日のための仕事とは、過去の分析からは予測不可能であり、見えないリスクがあります。ですからドラッカーは、分析(intelligent analysis)ではなく勇気(courage)に関わるものといっているのです。

実は、本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。優先順位の決定は比較的容易である。集中できる者が少ないのは、劣後順位の決定、すなわち取り組むべきでない仕事の決定と、その決定の遵守が至難だからである。(中略)優先順位の分析については多くのことがいえる。
しかし、優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気である。優先順位の決定については、いくつかの重要な原則がある。しかしそれらの原則はすべて、分析ではなく勇気に関わるものである。
すなわち
■過去でなく未来を選ぶ
■問題でなく機会に焦点を当てる
■横並びでなく自らの方向性をもつ
■無難で容易なものでなく変革をもたらすものを選ぶ

P.F.ドラッカー『経営者の条件』p146『プロフェッショナルの条件』p141
“The Effective Executive-The Definitive Guide to Getting the Right Things Done”p111

したがって、現在集中して取り組んでいる仕事以外のものにコミットしてはならない。現在の仕事を終わらせた後、改めて状況を検討し、優先すべき次の仕事を選ばなければならない。
集中とは、「真に意味あることは何か」「最も重要なことは何か」という観点から、時間と仕事について自ら意思決定する勇気のことである。この集中こそ、時間や仕事の従者となることなくそれらの主人となるための唯一の方法である。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』p152

To-Do Listを作成して仕事を進めている方は多いと思います。やらなければいけない仕事を列挙することによって、ヌケ・モレを防ぐためにはとても有効です。
ただし、リストを見て、手っ取り早くできるものから片付けていって多くの項目をつぶすことで、仕事をしたという達成感に満足していませんか?リストアップした項目を赤線で消していくのは快感です。(私もかつてはそうでした)
しかし、リストアップした項目から、それらの必要性を判断すること、その後、優先順位を付けることです。そして最後の引用でドラッカーが言っているように、優先順位の一番が終わったらすぐ二番目に移るのではなく、もう一度、リストアップした項目を見渡して、新たに順位付けをしなければなりません。
なぜならば、優先順位一番の仕事をしているうちに時間の経過とともに環境が変わっているからです。

注:ドラッカーの引用は、『経営者の条件』第5章、『プロフェッショナルの条件』Part3第4章からです。両者には若干の翻訳の言葉に差異があります。後から訳された『プロフェッショナルの条件』を主に使いました。一部、原書からも参照しています。
 

Topics:現状維持バイアス(ゆでガエル理論)

「ゆでガエル理論」とは、ゆっくりと進行する危機や環境変化に対応することの大切さ、難しさを戒めるたとえ話の一種で、おもに企業経営やビジネスの文脈でよく用いられます。(「現状維持バイアス」と呼ばれます)
カエルを熱湯の中に入れると驚いて飛び出しますが、常温の水に入れて徐々に熱すると、カエルはその温度変化に慣れていき、生命の危機と気づかないうちにゆであがって死んでしまうという話です。
理論といっても、実際は作り話で科学的にも誤りであることがわかっていますが、経営者や経営学者、経営コンサルタントなどによってまことしやかに語られてきたため、すでに一つの教訓として定着しています。(日本の人事部HPより)
上記のように、「ゆでガエル理論」とは一種の疑似科学であり、思考実験にすぎないという評価が下されています。それでもなお廃れないのは、人間の本質を正しく指摘しているからでしょう。

そこで、私たちが実務上教訓とすべきは、「現状維持バイアス」です。これは、生存には必要不可欠なものです。しかしときにはそれが、かえって発展を妨げて、破滅的な終局へと向かわせることもあるのです。
日本の貴重な自然を構成しているカエルを想うならば「ゆでガエル」はやめて、「現状維持バイアス」と言い換えて使っていきたいものです。
次回は、Leapfrog(蛙跳び)を取り上げます。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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